起きて半畳寝て寝袋〜ミニマリストまでの道程

波乱万丈の末辿り着いた持たない暮らし

リアルハードロマンチッカー壱

   彼に出会ったのはもう10年近く前になる。出会ったきっかけは私が当時幾つか代表を勤めていた会社の一つでタレントの卵をコンパニオンとして派遣する会社があり、社長と上顧客として我々は出会った。

まあ会社の形態が無店舗でコンパニオンを宴会、ホームパーティ、個室のあるラウンジ、ホテルの部屋などお客のもとへ複数名派遣するスタイル(風俗店に非ず)なので実際に顔を合わせたのは彼がお店を利用し始めてから数ヶ月後なのだが。

一回数万円〜のコースを時に一日何回もオーダー、月に200万〜ほどお店の売り上げに貢献してくれる上客、しかも呼ぶ場所は会員制のラウンジや高級シティホテルのハイクラスな部屋ばかり。

そんな上客の彼からある日コンパニオンを通じて私に誘いがあった、ぜひ社長と食事がしたいと。

上顧客の誘いを断る理由は代表である私に無論無かったが彼に付いた事のあるコンパニオン、彼と現場で料金の支払いなどのやり取りをしたスタッフ一同から全力で止められた。

刺青が入っていた、ひっきりなしに携帯に良からぬ内容の電話がかかってきていた、ホテルの部屋に入ったら某芸能人が泣きながら土下座していたetc...

君子危うきに近寄らず、普通の人間なら躊躇して何とか理由をつけて会わないようにするのが普通なんだろうが、あいにく私はそのような防衛本能は一欠片も持ち合わせておらず、虎穴に入らずんば虎子を得ずを座右の銘とするような人間だったので引き止めるコンパニオン、スタッフを振り払い彼の指定した待ち合わせ場所まで一人向かった。

待ち合わせ場所に近づくと白を基調とした爽やかな出で立ちながらも眼光が鋭い異様なオーラを放つ男が立っていた。

他に人待ち顔の人間は居ないし間違いないな、と思った瞬間彼の方から声をかけてきた。

彼「○○さんですか?」
私「はい!△△さんですねいつも当店をご利用いただき誠にありがとうございます!」
彼「いやいやいつも楽しませてもらってます、まあ立ち話もなんですからどっかお店に入りましょう」
私「はい、それではこの道の先に風情のある和食屋がございますのでそこにしませんか、個室もありますし」

怪しい男が二人連れ立ち地下にある和食屋の暖簾をくぐり丁度奥の個室が空いていたので通してもらいました。

改めてビールで乾杯、お互いの軽い自己紹介を済ませ終始和やかな雰囲気。

なんだ割と良い奴じゃないか。

‥この時はこの先に待ち受ける凄まじいエピソードの数々に腰を抜かしそうになる濃いい時間が待ち受けるなんてこれっぽっちも思っていませんでした。

‥続く