リアルハードロマンチッカー伍
〜リアルハードロマンチッカー肆からの続き
あれだけ湯水の如く金を遣ってた男が私選弁護人を用意出来ないほどに窮していた事実に驚いた。
それでもってまたこの弁護士が…
所謂国選のボケ弁ってぇのを絵に描いてペラペラの安いスーツ着せて、脂の浮いた眼鏡を掛けさせたようなおっさんで、まぁよく司法試験に合格したなって位アンポンタンなおっさんだった。
このボケ弁は彼と私がどのように知り合い何故今回情状証人を私が引き受けたのかを聞かせて欲しいと、貧乏ゆすりしながら聞いてきた。
私は彼との出会いから今迄の経緯、そして情状証人を引き受ける事にした真意を包み隠さず話した。
ボケ弁「う〜ん、今お聴きした話のままでは裁判で心証が良くありませんな〜」
貧乏ゆすりの速度をあげ早速ダメ出ししてきやがった。
ボケ弁「先ず出会いが良くない、彼と共通の趣味があってその集まりか何かで意気投合したって言うのはどうですか?」
私「共通の趣味って言われても…特に思いあたりませんねぇ」
ボケ弁「彼が好きな事とか良く話題にしてた事何かないですか?」
私「彼が良く話題にしてた事…オンナの話と金の話と悪い話しかしてないですよ、あっ!昔のプロレスの話をたまにしてましたね、一緒に新宿のアントニオ猪木酒場にも行ったなぁ」
ボケ弁「それだ!プロレス同好会みたいな集まりに参加したところお互い知り合って意気投合したという設定にしましょう!よく二人でプロレスの技を掛けあったりするんですよ〜なんてね!」
私「…」
卍固めでも掛けてやろうかこのアンポンタン…
呆れる私など意に介さず意気揚々と一気にメモしだすボケ弁。
お世辞にも柄が良いとは思えないおっさん二人がそんな同好会に入ってて、無邪気にプロレスの技を掛けあったりしているという設定自体がそもそもおかしいだろ!どう考えても!
しかもそれで心証が良くなるとこのアンポンタンは本気で思ってるんだろうか…。
その日からボケ弁とトンチンカンな打ち合わせを重ねる日々が続いた。
…続く